香港は引き返し不能の「瀬戸際」に、行政長官が会見……終わる英国領時代の栄光。
CNNの記事である。香港行政長官が会見しても止まることを知らぬデモは、2日連続の空港閉鎖という事態になった。流石に3日目は起きていないようで、改善の兆しがあるようだが、中国人民解放軍が香港に近い沿岸部に軍を集結させているという話もあり、決して良い状況ではない。
元々香港島は、南京条約によって英国の植民地となった。しかし、明日が終戦の日なのでちょうど良いが、大日本帝国時代に大東亜共栄圏（大東亜共同宣言をして戦端を開いた）を掲げた大日本帝国が、大東亜戦争（太平洋戦争）時に奪取し数年間統治していた歴史もある。
日本が敗戦した後、再び英国領統治に戻った。ただ、大日本帝国と抗日戦争（日中戦争）で勝利した中国は、国際連合で常任理事国入りし、徐々に国際的なポジションを高めていった。その間には、冷戦による中国との対立などもあったが、89年にベルリンの壁が崩壊、90年代に入り中国国内でも民主化（のようなこと）が始まり、最終的に1997年に中国に返還されることとなった。
そして当初、それなりの自治権を与えられていた香港だが、緩やかに中国本土と同じような縛りを与えてきた。
その最新の縛りが、逃亡犯条例改正だったのだ。香港の自治権では、逃亡犯を香港で逮捕しても、本土への引き渡しは条例には含まれていなかった。
香港自治の中で処理する事に委ねられていた訳だ。しかし、これを改正し引き渡せるようにするというものだった。
元々、中国の法制度は欧米や日本のそれとは違って、三権分立が十分にあるかは今でも定かでは無い。即ち怪しいのだ。（ちなみに今の日本でも一部の政策に影響する問題では、特に最高裁で怪しい側面があると噂される。）だから、イギリスから中国に返還される前にも、引き渡しの条例は、被告（容疑者）となる人の人権がある程度確保される国でないなら、引き渡しには応じない姿勢だった。その対象に中国は入っていたわけだ。
そして、今、それが変わったかというと、習政権を見る限りでは自分や政権、党の集権を図ってきたこともあり、香港の住民から見ればむしろ、今それを許諾する状況にはないという結果だった。
それが、この長引くデモ、過激化するデモを引き起こしたようだ。
では、中国政府はそれに対して、引く気は無いのかというと、現状では中国政府もそれは難しいようだ。
本来は改正条例法案を廃案にすれば良いのだが、それを無期限凍結した。これは、いつか必ずやると決めているからだろう。
何より、行政長官は自ら辞表を政府に出したが、政府からは受け取りを拒否されていたとされる。
これは、以下のロイターの記事を読むと良く分かるだろう。
中国政府にとっては、これは一党独裁による統治に影響を与えるとても大きな問題なのだ。
まあ、今後も散発的に暴動が起きるなら、軍が動く可能性も出てくるだろう。その場合は、天安門事件のような事態も有り得る。
一方で、起きなくなったから不満が解消されるというわけではない。たぶんその場合は、危険な人間をある程度拘束したということになるためだ。
今回これほどまで暴動になっているのは、こういう暴動を起こした人々に対しても、逃亡犯条例を契機に条例改正が進み、厳罰化へと舵を切る恐れもあるからだろうが……最終的にどういう結末になるのかは、見通せない。
確かな事は、１つだ。既にこういう話は、世界でありふれた光景になり始めていると言うことである。まあ、今回のデモを見ても思うが、行政府はそれで完全に取り下げたりしないのも、今やどの国でも似たようなものがいくつかは見られる。それが示すのは、暫くすれば、それに反対するものは減るという発想や、デモ長引き、生活が困窮しかねないほどになれば、結果的に無気力になり従うだろうという思惑もあるのかもしれない。
まあ、この数年の日本はその成果の産物でもある。
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