ボーイング、55億ドルの債券発行へ-エンブラエルとの合弁に向け……消えゆく3位と苦しい最大手(仮)。

ブルームバーグの記事である。リージョナル~ナローボディーまでを手がけているエンブラエル(EMBRAER)は世界第3位の航空機メーカーである。
既に、今年の2月にボーイングによる買収が確定した。エアバス(Airbus)とボーイング(Boeing)の2強時代はさらに盤石になった訳だ。
ただ、その後の737運行停止問題で、あの時とはBoeingの状況は変わってしまった。Boeingは社債発行をすることになったようだ。これは、737MAX8と10の引き渡しが止まっているためだ。損失も拡大し始めており債券発行せざる終えなくなったようだ。

<3位と4位は消える>

ちなみに、旅客航空機メーカー4位は三菱航空機が買収を表明したボンバルディア<Bombardier Aviation(Aircraft Services/旧Bombardier Aerospace)>であった。今はそうじゃないが……。これは、Airbusにナローボディーが、三菱にそれ以外が行く形となったため、もう消えたと言ってよい。これでエンブラエルが消えれば、三菱航空機が世界3位になれる日が来るかもしれない。エアバス(Airbus)に譲った美味しいところ以外の残りカスを全て買ってしまったので事業は赤字になる。(当初は全部の予定ではなかったとされる)そして、2位以上とのシェアベースでは狭まったが、利益ベースでは近くはなっていない。民間用旅客機の2強時代に臨むのは大変である。

ただ、第1位のBoeingもかなり厳しい。737MAX8や10の、認可が早期に出なければ下手をすると、今後急速に業績を悪化させて破綻という流れも有り得るだろう。これは、世界景気次第でもある。

<厳しいBoeing>

Boeingのような大企業というのは、中小企業のように小規模の事業のいくつかが成功すれば、業績が改善するわけではない。
主力事業、これから売れるとしていたものが売れなくなるということは、会社の存亡に関わる一方でそういう主力事業の代替(だいたい)は大きいが故にすぐには見つからない。

ただ、EMBRAERの買収は既に承認されている以上よっぽどのことがないと、中止や延期もできない。中止や延期をすれば、株価は必ず下がる。今の段階でよほどの業績的問題がなければ、戻るという選択肢はないのである。

これが凶と出るか吉と出るかは737MAX次第だと思われる。予定では9月頃までに再承認を得たいようだが、3月の飛行停止から今までにさらなる不具合や欠陥が1つや2つ見つかっているという報道が海外ではあり、さらにMAX型の航空機における信用自体が毀損しているため、今年中に出来ればよい程度だろう。そんな状況が来ることが分かっていれば、EMBRAERの買収を2月に発表してはいなかっただろう。

ERJ事業を買収しても大きく成長するとは言い難い。足りない事業を補完するのみであり、昨年赤字に転落したEMBRAERを今救っても意味があるとは言えない。今一番売れていたはずの737MAX8や10と、ツインターボファンの大型機777(トリプルセブン)などがあってこれがあるのとでは、イメージが違うからだ。ERJも含めてセット販売出来る(相乗効果が狙える)はずが、主力機がないため、それもMAX8と10の先行きが見えないと覚束ない。

むしろ、Airbusが手に入れたA220(Bombardier CRJ-1000等のC Series)と同じように追っかけるはずが、逆にA3xxシリーズが売れて、それに加えてセットでA220が売れるという皮肉な状態になりつつある。もし、それが進むと買収した後のEMBRAERの士気にも影響するだろう。買収のタイミングはとても重要である。

それでも、取らざる終えないのは、投資家に成長を見せる必要があり、覚悟を見せる必要があるからだ。強気でなければ、投資家は寄ってこないからだ。
後は、737MAX8や10事業がいつ解禁されるかに掛かっている。



尚、今年はBoeingの航空機出荷がAirbusを下回る可能性も示唆されている。2度の同じ計器で起きたと思われる事故で、Boeingの立場は一転してしまった。これが、市場の原理なのだが、今似たような事は、半導体プロセッサー事業などでも起きている。ただ、その先にさらなる競争があるのかは心配になる。一番不味いのは、これでBoeingが凋落して消えるパターンと、その先に一強時代が始まりその一強が景気後退で弱るパターンだ。

本来、そういう事があるからこそ各国は独占禁止法で最大手や大手による下の企業買収を禁じ、下から上がって来る企業を待ち受ける体制を目指していたが、今はそれが機能していない。結果的に強者が長く強いままでいることも増えた。短期的に見れば、いくつかの事業を大きな会社が喰らっていくのは良いことだが、富の分配や景気循環のサイクルを考えると、ひたすら大きくなることは回復の難しい衰退と、競争の低迷、技術革新の遅れを生み出すかもしれない。

最近はIT企業に関してこういう問題が指摘されているが、現実を言えば全ての業種で最大手や2位3位の企業が買収を広げているという状況は多い。
日本など人口が減っているので、それをせざる終えないというのもあるのだろうが、競争が失われていくという点で言えば、技術の新たな発展(イノベーション)や、価格競争、縮小均衡でも下から上がっていくことで変わるはずの市場が変わらないという流れも生み出すことはある。実際、今はそういう状況に入っている。そして、これを放置しておくと、結局最大手がいなければ、市場が混乱することにつながり、最大手に問題が起きたときに、公的資金を投じないと潰せない企業になってしまう。

Boeingのこの状況を見ていると、本当はそういった辺りも世界がしっかり考えないとと思うが、本来それを考えるはずの、今の政治リーダー達はそれを考える気も無い。そして、世界の報道も一部の大きな組織に対する見方は強いが、それを全体に当てはめて見ていないという感があるのは否めない。


この記事へのコメント

この記事へのトラックバック