全国で増加するプール熱・手足口病・ヘルパンギーナ感染症……発症は子供だけとは限らない。

咽頭結膜熱警報と言う言葉をご存じだろうか?主に乳幼児と学童が発症する夏風邪の一種に対する流行警報である。プール時期に広がるため、プール熱、またはヘルパンギーナ(手足口病)などと呼ばれる。これらは共通する要素があり、咽頭が酷い炎症を起こし潰瘍や水痘が出来ることが多い。また、膿むケースもあり、痛みで食べ物が喉を通らないといったことも多くなる。

以下は、ヘルパンギーナに関する国立感染症研究所のウィルス情報である。昔はただの風邪だったが今はウィルス株や細菌株が分離出来る時代になったので、ヘルパンギーナのウィルス株はエンテロウィルス系の感染症であることが分かっている。

ちなみに、咽頭結膜熱警報では、ヘルパンギーナに限らず、アデノウィルス感染症も知られているが、こちらはプール熱と呼ばれるものの原因ウィルスであり、実は通年感染する。一般的な通期風邪である。年中発症率がそこそこある典型的な風邪なのだ。ただ、メディアの報道を見ると、冬になると冬に多いと報道され、夏になるとプール熱のように夏のウィルスとして扱われるのが特徴的なウィルスでもある。


これと同じような通期感染風邪には、ライノウィルス感染症等もあるが、アデノの方が上気道に感染し巣くうようで、咽頭の炎症が強くなるようだ。即ち悪化すると食事をし難くなる。一方で、ライノは気管支など少し気道の下側で発生しやすい(アデノもライノも株によって差はあるので絶対ではない)ようで、喘息持ちの人などは注意しなければいけない感染症であると言われる。これは、SARS(サーズ)でお馴染みとなったコロナウィルスも同じような傾向があるはずだ。(コロナウィルスは日本では秋から春までの冬場の方が多いはず)


<昔は少なかった!?プール熱やヘルパンギーナ>

というのは、ご存じだろうか?何故少なかったのかというと、幼稚園や保育園に行く子供が少なかったからだ。
これらの病気、夏場には水を扱う場所で広がりやすい。しかも、タオルなどを介して広がる傾向がある。さらに、排泄物からも広がる。いわゆる飛沫感染するのだ。そのため、集団行動が多い場所で広がりやすいという問題がある。乳幼児はそもも、免疫記憶の量(病気の経験)が絶対的に少ないため、こういう施設では幾ら十全な対策があっても簡単に広がるのだ。要は、発症しやすいというわけだ。

さらに、小学校と幼稚園や保育園ではもう一つプール実習と、プールを使った水遊びにも違いがある。
小学校や大規模な幼稚園なら、プールへの規模に応じた塩素剤の添加が法的に義務づけられている。しかし、小規模プールだと条例などが地域ごとになければ、努力義務はあれど強制はされていないはずだ。即ち、その日に水をビニールプールに入れて遊ばせて、棄てるような扱いをすることで、衛生管理をしている訳だ。そこで、感染しやすくなる。

さらに、保育園などではオムツの外れていない乳児や幼児がいるため、そこからある程度広がるのは仕方がない。
だから、2000年代になってからこれらの流行が起きる率は増加している。まあ、報道はされない話だ。共働きの増加で幼い頃から保育園に行く子は増えている。それ故に、集団感染もしやすい状況にあるわけだ。

そして、そういう猛威が増えると、その影響を受ける範囲は他にも広がる。

<大人の発症は怖い>

ちなみに、ヘルパンギーナアデノウィルスも大人が発症するケースはある。こちらも、大人が発症する時には重症化しやすい。
大人が発症するケースはたいていが、子供が発症して看病した後や、子供がいない人の場合なら、徹夜や食生活の乱れが続いた後である。親に多いのは、夜も看病して、昼も看病し、仕事もしてとなると食事や睡眠が不足する。
その状態で子供から生で新鮮で強力なウィルスを大量に貰うと、発症しやすくなる。子供のいない生活環境では、とにかく食生活と生活リズムの乱れが影響する。この時期だと、気温の変化などで眠れないとか、そういうケースも影響するだろう。

発症すると、大人の場合は免疫が反撃態勢を整えるまでにかなりの時間を要する。ヘルパーTと呼ばれる司令塔細胞に増援を求め、造血幹細胞で最適な抗体(immunoglobulin/免疫グロブリン)を持つB細胞(武器を持つ軍隊)が量産されるまでには日数が掛かるのだ。そうこうしている間に弱っていくこともある。だから、調子が悪くなる前に、おかしいなと思ったら対策を始めた方が良い。

ちなみに子供の頃は、記憶されている免疫(ウィルスや細菌の型)の数が少ない一方で、自己免疫の量産スピードは大人より数段早いようだ。だから、インフルエンザ脳症のように極端に増殖が早かったというケースを除けば、重症化せずに治っていく。

大人は、最初の段階で既に体を守るに十分な免疫があるはずだから、それを超えてウィルスがやって来たり、免疫の能力が何らかの理由で衰えてしまうと、再活性には長い時間が掛かる。だから、重症化する前に予防や初期対応をしなればいけない。


<流行する夏風邪>

これを書いたのは、以下の市川海老蔵さんの記事を読んだからではない。
私が住む地域で、ヘルパンギーナが流行っているからであり、全国的にもこのところ流行の兆しが見られるからである。子供の場合は、予防といってもなかなか方法はない。そもそも、子供のうちに感染してある程度発症した方が、大人になってからの免疫は高くなるからだ。発症したら重症化しないように、早めに医者に罹り、安静にすることが大事だ。

しかし、大人が発症すると海老蔵さんがそうであるように、治療に相当な時間が掛かることがある。海老蔵さんの場合は声を使う仕事をしていること。1人親で子供の世話もあり、さらに芸を休むことによるプレッシャーもあるはずで、それが気を落ち着けることに繋がらず治療を長引かせてしまうのだろう。こうならないためには、日頃から気を付けなければいけないが、なかなかそれでも、上手くは行かない。


ただ、世間で今これが流行っていることを知っておくだけでも、対処は出来るだろう。


尚、頻繁にやると効果が無くなるが、喉の状態などが2日~3日以上おかしいと思ったなら、VICKS Medicated Dropsなどの市販薬を用法用量を守って使うと、発熱などの症状に至らずに治ることはある。ただし、頻繁に使うと効果が無くなってくることも有り得るので(細菌感染だと抗生物質を使って一気に叩かないと効きにくくなり、より重症化する恐れがある)、あまり喉の調子が悪くなることが頻繁に続くなら、初期症状でも病院で診察を受けるように心がけた方が良い。

時代が変わると、昔は一斉には流行らなかった病が流行る事は良くあるが、今は体調管理も難しい時代になった。
今は、高齢化によって、高齢者から流行る病気と、少子化なのに共働きが増えたことで、子供から広がる病の両方があり、それが冬場に、労働者層に対してダブルパンチをお見舞いしてくれる。それが、最近では夏にも出はじめていると言うわけだ。

まあ、詳しくは書かないがこれは日本の医療制度(国民皆保険)が持つ闇の部分が影響している面も多分にある。
それはともかくとして、病気にならないためには、とにかく早めの対応が大事である。ちょっとおかしい状況が続くなら、なるべく早く手を打たないと、耐性ウィルスや細菌も増えているので、いい大人でも1度発症すると、長く苦しむことは有り得るのだ。病院に殆ど掛からない人ほど、そうなりやすいので、気を付けた方が良い。

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