GPUはInternal(iGPU)か、Discrete(dGPU)か……違いと必要性を考える。

ITmediaの記事である。こういう記事の難しいところは、GPUという言葉の定義づけDiscrete(分離/dGPU)とInternal(内蔵/iGPU)という形で先にその意味を書いておくことと、記事で使う言葉を統一しておかねば、分かり難くなると言うことだろうか?意図している事は分かっても、重量級や、GPU搭載モデル、GPU非搭載のモデル、高性能なGPU、GPU外付け、内蔵GPUと変わると統一感がなく分かり難くなる。これは記事を書いていると、私もよく填まる問題である。

しかし、VRはともかくAIと仮想通貨はクラウドベースが多いはずなので……それをパソコンの活用と言うべきかは難しいところだ。

<GPUとは何か?>

GPU、Graphics Processing Unitはコンピュータグラフィックス(画像)演算装置のことである。その昔は、グラフィックス加速器(Graphics Accelerator)と呼ばれていた。通称名はいろいろありグラフィックカードなどとも呼ばれる。VGAと呼ぶ人もいる。
このGPUという名称が広がったのは、nVIDIAが開発名NV10の名で開発していたGeforce 256を発表する際に発表のプレゼンでGPUと呼んだことが始まりだった。これには、Hardware Transform And Lighting(hardware T&L/ハードウェアによる光源演算)が搭載されていたためだ。現在で言うこと頃のShader Model 1.0である。固定演算の陰影処理だったので、これを利用するCGは全て同じような光源処理になったが、これまで難しいとされていた波、波紋などもある程度再現できるようになり、CPUの負荷が大幅に減り、3D処理にはこれが必須となっていった。ここから、始まったのがGPUである。尚、AMDはその数年後RADEON 9700でVPU(Visual Processing Unit)という言葉を発表しているが、こちらは残念ながら一般にはあまり定着しなかった(使われてはいるがGPUほどメジャーではない)。まあ、AMDの発表したVPUの方が実は今のGPUという名称より視覚効果全般を意味するため、近いのかもしれない。


<internal GPU>

内蔵GPUは、iGPUと呼ばれる「i」はinternalのことである。これの始まりは、インテルチップセット(ICH)に統合されていたi810 Chipsetのi752 Graphics Acceleratorが始まりである。パソコンの価格を下げるという目的とフォームファクター(形状)の小型化を目指して始まったものだ。

これのCPU統合版というのは、最終的にCore i(2010年のArrandaleに搭載されたIronlake)が登場する頃までお預けとなったが、実はi810が登場した当時Timna Familyと呼ばれるCeleron-Coppermine-128Kベースの製品が開発されていた。
出荷されなかったのは、ラムバスの高級メモリーを使っていたたことで、低価格市場で売るはずが、メモリーだけで云万もするほどお高い代物だったからである。これが開発(設計)されたのは1997年-2000年(出荷予定が1999-2001年頃だった)のことである。NV10も同時期なので、面白いことにどちらも同じ時期である。

-iGPUのメリットデメリット-

iGPUのメリットは、部品点数が少ないことと、小さいことにある。上記したTimnaがキャンセルされたのはメモリーの問題で価格という最大のメリットが死んでしまっていたからだ。まあ、以下の図に示したが、CPUやチップセット内にGPUを収めれば、部品点数は減る。だから回路が少なくなり、電気を通す部分が減るから、電気代も理論上お安くなる。部品点数が減れば、価格も下がるという経済性では良いことずくめである。

しかし、欠点として、CPUなどと回路の多くを共用(共有)するため、GPUの処理が多いと、CPUが遅くなり、CPUの処理が多くなるとGPUがその割を食ってしまい処理が遅くなる。だから、当初の製品ではiGPUはゲームも出来ない役立たずぐらいの評価をされていたこともあった。最近は、後述するが大きく改善されつつある。



<Discrete GPU>

外部(分離)GPUは、dGPUと呼ばれる「d」はDiscreteのことである。当該の記事中では外付けと書かれているが、外付けではない。これも基本は内蔵で、外付けは2000年代後半になって登場したまだ新しい製品だ。筐体内部の汎用バス(PCI、AGP、PCIe、C-Bus、ISA、他)に搭載するものである。
近年、Thunderboltが普及したことで、外付けも専用のThunderbolt対応PCIeボックス(結構お高い)を買えば外付けも出来るようになった。

因みに、英語で外付けはExternal(エクスターナル)である。

何故、CPUやチップセットに搭載しないGPUをdiscreteと呼ぶのかというと、上記したThunderboltを経由したGPU搭載が厳密にはExternalという点もあるが、それ以外にもう一つiGPUレスのExtreme/enthusiast/enterprise※向けのEX/EPと呼ばれる製品群との区別でも使われるからだ。この辺りは、PCを自分で組み立てるような人で無ければ知らなくても差し支えないが……まあ一応後ろで説明する。

※AMD製品はデスクトップ向けならPerformanceモデルからiGPUレスである。

-dGPUのメリットデメリット-

dGPUのメリットは専用のGPUをCPUやチップセットとは別に搭載しているため、高速に動くという点にある。
またビデオメモリー(IRAM)と呼ばれるCG専用メモリも実装されているため、物理メモリー(RAM)の消費を抑えられる。
だから性能においてアドバンテージがある。また、iGPUも同時に使えるケースもあり、消費電力を抑えるためにその機能を使い分けることも出来る。

その代わりiGPUのみに比べてコストは高くなる。また、dGPU利用時には消費電力が大きくなるという欠点がある。
ただ、3D処理に関する性能は段違いに高速化するケースが多い。
即ち、すぐ後に説明するiGPUレスモデルとiGPUのみの製品の間にある比較的バランスの良い製品である。

尚、ノートパソコンや一体型パソコンでなければ、内蔵のdGPUはGPU専用のPCI-Expressに実装されており交換が可能である。

dGPU_2.png

<iGPUレスの利点と欠点>

これは、dGPUの専用になる。製品によってはiGPUが全くないCPUというのもある。そういう製品は、ディスプレイ出力のポートもないので、必ずdGPUを必要とする。何故こういう製品があるのかというと、CPU側にiGPUがない分、そこにCPUコアを沢山のせたり、メモリーと繋ぐ回路の幅を広げて、より高速に処理が出来るようにすることが目的である。即ち、最高の性能を求める場合にiGPUレスが良いということだ。

しかし、それ故にdGPUを必ず別途購入して搭載しないと、パソコンは動かない。モニター出力が出来ないからだ。性能も高いがお値段も高く、電気代も大きい。さらに、発熱も大きいことが多いので、特別な冷却をしていないなら、冷却ファンの音もうるさくなる恐れがある。だから、Extremeやenthusiastと呼ばれる製品やWorkstation/Enterprise(サーバー)と呼ばれる製品群に多い。

このタイプの製品にノートPCや一体型は殆どない(一部例外はあるがほぼない)、そのためdGPUは交換が可能であるのも特徴だ。
edGPU_3.png

<iGPUだけで出来ること>

現在では、内蔵GPUでも性能が徐々に上がっているため、2018年から2019年に出荷開始発売されたCore iクラスや、RyzenクラスのiGPU内蔵CPUであれば、4Kクラスの動画編集などでも、個人用途でのカット編集程度の処理やエンコードならiGPUで十分なケースが多い。

また、ゲームにおいてもフルHD(1920×1080ドット)やHD(1280×720ドット)での3D処理の場合、30fps(1秒間に30フレームぐらい)の演算は出来るものが大半だ。FPSのような視覚的な応答の早さや、精密さを求めるプロゲームでなければ、内蔵でも大半のことはこなせる。
即ち、大半の人にとってGPUなどiGPUでも十分なのだ。だから、大抵の人はiGPUモデルを買って困る事はない。
dGPU搭載を敢えて選んでいても、実はiGPUでも十分だったというケースは既に多くなっている。

-一部のiGPUじゃないと出来ないこと-

尚、iGPUじゃないと処理出来ないものも今は存在する。それは、UHD BD(Ultra HD Blu-ray Disc-Video)を再生する場合だ。これを処理するには、Intel HD Graphics 620より上位のiGPUが必要となり、AMD Ryzen(RADEON)及び、nVIDIAのGeforceでは再生出来ない。これは、セキュリティ上の仕様である。


<dGPUが求められる用途>

では、どんなときにdGPUが必要になるのか?具体的に見ていこう。

-動画処理-

動画編集なら高度な合成やエフェクト処理が伴う場合がまず一つある。
こういう部分がはっきり表示されるソフトは少ないが、手元ですぐに分かる例として言えば、PowerDirector(PD)のエフェクトがそれだ。
以下の画像にの中、カラーペイントやグリッドなどのサムネイルの左下にnVIDIAのロゴが入っている。これは、nVIDIAのCUDA(GPGPU)を使っているという証明である。これはnVIDIAのdGPUを搭載しているとレンダリング処理(映像とCGエフェクトの合成処理)速度が大幅に上がる。


また、複数のトラックを重ねるような処理で且つエンコードやレンダリングをソフトウェア(GPUを使わない処理で行う)設定にしている場合は、iGPUよりもdGPU製品の方が、コンマ数秒でも処理性能が上がることがある。

具体的に同じPDで説明すると以下のハードウェアビデオエンコーダーを使っている人は、内蔵GPUのパワーでも出来ることなので、dGPUレスでも十分な可能性が高い。
iGPU_HVE.png

逆に言えば、iGPUを使わないでCPU処理する事が多いなら、dGPUモデルの方がよいと言うことだ。
まあ、私の場合はPDに限らず編集ソフトのエンコードパラメーターから全部プリセットではなく自らで最適値を調整しているので、ハードウェアエンコーダーを使わないが、この手の拘りがどこまであるかに依存する。即ち動画編集だからdGPUが必要なほどの処理をするかどうかが重要であって、動画編集=dGPU必須という訳ではない。ただのカット編集+ハードウェアエンコード(トランスコード)が可能な動画でdGPUが必要かというと、はっきり言って不要である。

尚、よほど2時間や3時間の連続処理が必要な映像を処理するなら、dGPUモデルで、ワークステーションクラス(デスクトップならミドル以上のタワー型)の製品が良いだろう。


-コンピュータグラフィックス処理、ゲーム-

先にも簡単に書いたが、ゲームでも実は大半のゲームソフトは既にiGPUで動作する。ただ、3Dゲームの場合は、画面の解像度を1280×720ドット程度に抑えないと、30fps(アナログテレビやDVD並の描写速度)を達成するのは困難なものもある。

また、ゲームでこのフレームレートでは実は遅いというゲームも多い。因みに、プロゲーマーと呼ばれる人は、平均の最小で75fps~平均最大で120fpsを求めることが多い。(60fpsは下限値である)だから、どのゲームでも快適さを求める場合は、dGPUを必要とする。1920×1080ドットのフルHDで、ゲームの描写速度がいずれのゲームでも困る事無く動く程度となると、今の時代だとGeforce GTX 1050ti~1060以上、RADEON RX560より上位ぐらいの性能は必要になるだろう。

これに関しては、遊びたいゲームのホームページを見れば動作環境の記載があるはずだ。それを見て判断することになるが、オンラインゲームの場合は、最小動作(提供開始時の動作最小要件)と、実際に今やるときに、周り(オンラインの仲間)と対等に遊ぶ場合の遅延要件が異なる事もしばしばある。
例えば、ITmediaの記事にある。PUBGの場合は、動作環境が以下のようになっているが、1920×1080ドットだとGTX 1060クラスが必要になる。

とにかくゲーム専用の目的で買う場合は、その時点で販売しているnVIDIA Gefoceの後ろに600が付く製品の現行または一個前ぐらいの世代で選ぶのが良いだろう。尚最近AMD RADEONは型番が揺れているので、もしRADEONで選ぶなら、Geforce の現行型番でRADEON 同等ぐらいでも付けて、Google検索すればヒットすると思う。

2Dゲーム(ノベルゲーム、テーブルゲーム、カードゲーム)のようなゲームなら、iGPUで十分である。


3Dグラフィックスを作成するソフトを使う場合、モデリングソフトを使う場合は、iGPUでも十分動作するが遅いケースがある。この辺りはアプリケーションの説明書やヘルプ、動作要件を確認した上で、必要ならソフトウェアのメーカーとヘルプ相談して、好ましいビデオカードを選ぶと良いかも知れない。コーディング前やコンパイル前のCGテスト処理を高速に扱う場合で商業利用を伴う場合は、nVIDIA QuadroやAMD Radeon Pro(旧Fire)系のカードが好ましい。必須ではないが、その方が製作アプリケーションとの相性が高い。

お値段も段違いに高いものもあるので、個人で使うかは人それぞれだ。
結構、個人でも知らずに、Pro向けだからと選ぶ人も居るが……。金に影響するぐらいの仕事(1秒が大事な仕事)で一日の半分ぐらいコーディングテストに使うとか、マッチングが必須で、ずれは許されないほどでなければ、たいていの人はGeforceか普通のRADEONで事足りるだろう。
QuadroやRadeon ProはOpenGL系の処理速度が確かに優れているが、処理する量が少ないならその差は目に見える程出ないことも多い。制御ドライバーの設定変更などもさほどしない人なら、一般性能(CG処理)の割にお高いQuadroなどを選ぶ理由も特にない。
個人でも、AIやマイニングなどのミッションクリティカルなコンピューティング等に使うならQuadroやRADEON Proの方が良いが……。


<iGPUで事足りる時代>

iGPUの進化は今も年率で約20%~30%のペースで進んでいる。PCでは、Intelの進捗が悪化しているので停滞傾向だが、特にスマホではその成長がはっきり分かるほど進化が進んでいる。それ故に、今後さらにiGPUで十分と言われる製品は増えていくだろう。ただ、dGPUはそれ以上の用途を一足早く取り込むことで生き残り続ける。

そのため、dGPUが必要な用途は、徐々に減っていくが、なくなる訳では無い。問題は、使い方がこれまで通りの使い方で特別新しい使い方をしない人が、今までもdGPUも使っていたから、dGPUじゃないと不足するかというと、そうでもないということだろう。流石に最新のゲームや開発、または手の込んだ映像処理だと別だが、年々iGPUでも十分実用に耐え、dGPUと比べても大差ないケースは増えている。




この記事へのコメント

パソたん運営事務局
2020年03月04日 18:52
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今後は、リンクからのクリック数やAmazon収益などを紐づけた分析ツールの開発も検討しています。
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突然のご連絡失礼致しました。これからもBlog、読んでます。
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