第3世代Ryzenが追い抜きを掛けるCPU市場……10nmを立ち上げられないIntel。

Intelがもたもたしている間に、AMDは七夕投入のRyzen(Zen2 Micro-Architecture)で攻勢を開始した。各紙のベンチを見る限り、ほぼIntelと同等以上に収まっており、前評判通りの性能となっている。弱かったAVX2(256bit SIMD)の性能が1ポート処理に対応したことで大幅に改善したことと、キャッシュの増加、PCIe4.0の対応というバックサイドのインターフェース性能向上も大きく寄与しているように見える。

問題があるとすれば、チップセットがPCHとしては異例なほど爆熱という点だろう。AMDはこういう荒削りが今でも残っているが故に、主力市場となっているMobileなどでは市場が伸ばせないで居る。トータルのプラットフォームとしては今一歩なのだ。しかし、パフォーマンス市場ではそれを差し引いても十分おつりが来る程度に良い評価になった。ここまでIntelの競合品に対して、アドバンテージを示して評価されるのはAthlon(K7)以来だろう。K8なども数値は良かったが、コアクロック当たりとか、SSE2抜きにするといった部分が多かったので、純粋に抜くという観点ではほぼ20年ぶりである。


<本命は9月以降、Intelの対抗製品Comet Lakeは……4番目の中継ぎ投入へ>

なお、本命となるプロセッサーはRyzen 9 3950X(16C/32T)の初代Ryzen Threadripperと同じコア数を持つメインストリームである。これは、エンスージアスト製品(EPYCの選別派生)ではなく、パフォーマンスの最上位という扱いになる。今の状況だとこれが出ればIntelをぶっちぎることになるのはほぼ確定である。

Intelはその頃にComet Lakeと呼ばれる14nm++++(14ナノメートルクワッドプラス/QP)の製品を噂通りなら全ライン(デスクトップ含む)で投入見込みとされる。10nmではなくしかも、Skylake Micro-Architectureベースを維持した第9世代か10世代扱いのようだ。ハードウェア脆弱性対策などが少し追加され、第10世代になるならAVX-512Fを無理矢理動作させるかもしれないが、多くの情報を見る限りAVX-512Fは殺しているようだ。AVX-512Fは熱密度が高いのでGPUありの14nmで動かすことはもう決して出来ないのだろう。

尚、NotebookcheckではComet Lake Uを搭載したDellのPCにおけるベンチマークスコアが掲載されている。

一部の記事では、Skylake ReReRefresh(リリリフレッシュ、またはレレレフレッシュ)などと一時期揶揄されたComet Lakeだが、リフレッシュを重ねると竹箒を持ったおじさんが「お出かけですかぁ」という姿が浮かぶぐらいレレッ(リリッ)ている。

パワーユーザーからは既に悲観的な見方が広がっている。そもそも、Cometは当初予定で10C/20Tまでだった。しかし、今AMD対抗上16C/32Tも出すのではないかと噂されている。もう、昔のIntelを考えるとなりふり構っていられないという様が痛々しい。14nmQPではダイの面積が増える一方で欠陥率も上がってしまう。即ち、今Intelが第9世代という体のCore iでやっているFコアのようなGPUレス不良品がさらに増えることも予想される。価格も上がることが容易に想像出来る上に、電力コストも増加する。それだけではなく、IntelはSkylakeからこれまでアーキテクチャの刷新はしていないのにマザーだけがドンドン変わってきた。AMDがちゃんと1世代保証しながら性能も上げている中では、今後これが地味に響き始めるかも知れない。
トドメはGPUも第9世代(当初は10世代Coreの10nmは1TFlops超えのGPUと謳っていた)であることが既に分かっている。

これでは今後上位ではモバイルを除くRyzenが売れるのも当然となる。

Intelが生き残れそうなのは、ハイエンドの10nmモバイル製品群だけになるかもしれない。但し、これにも怪しい部分が見られる。上記のDellのベンチを見る限り、Comet LakeはモバイルのU製品にも採用される。同じ10世代のUに10nmのSunny Cove(IceLake)と、Comet Lakeが共存する形を取ることが既に分かっている当たり、Intelはモバイルでも期待したとおりの数量を第10世代のUやYで供給できていないことが見えてくる。即ち、発表会では大々的に第10世代はGPUが売りと言ったのに、第10世代で買った製品が、実は第9世代と何ら変わらないGPUを搭載した製品という恐れも出てくる。

これを、来年までに何とか出来ないなら、AMDは来年のシュリンク版Zen3(7nm Plus)そして、再来年のメジャー更新版となるZen4(5nm、Intelで言う7nm相当)で完全に抜き去るだろう。

<今年高性能デスクトップ買う/作るならAMDだが……Appleには辛い>

確かなことは、来年の今頃までにIntelがデスクトップPC市場で圧倒的な製品を出す可能性は低いということだろう。少なくとも今年買うなら、AMDが絶対に良い。しかし、それが出来ない企業もある。それが、x86を選んだMacOSのAppleだ。Appleがプロセッサーエンジニアを揃えているのは、結局、IntelのCPUが停滞していて、Appleが期待するほどの製品が出せないから、自社IPを用いた別のコア設計を急いでいるのかも知れない。

まあ、ここでAppleがAMDに浮気するという流れでも面白いが。

この記事へのコメント

2019年07月09日 12:54
少なくとも今年買うなら、AMDが絶対に良い。しかし、それが出来ない企業もある。それが、x86を選んだMacOSのAppleだ。

ここで思わず笑ってしまいました。
マックユーザーはきっと誰もcpuなんて気にしてないでしょうけど

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