有機EL量産へ新ライン、JDIが来春稼動へ・・・ただの低価格量産なら厳しい?
元々、SONYや日立、東芝などはフルカラーの中小型有機ELディスプレイを生産していたが、JDIに分社した際に撤退や縮小をしている。そして、今になって旧Panasonic(IPSα)の国内主力工場だった茂原工場を、有機ELに今更変更することにしたようだ。まあ、やらないよりはマシというレベルか?それとも、勝算があるのか?今の後追い戦略は怪しさが強い。
LCD戦略が完全に、岐路に立たされており、しかも今それでもだぶついている中で、中国企業がLCD生産を倍規模に拡大するとも言われる。
その結果、SamsungなどはLCD事業を縮小しているが、液晶一本のJDIは焦っているのかもしれない。
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160530-OYT1T50010.html?from=ytop_top
尚、富士通キメラ総研の昨年末の予測では、有機ELは2020年に3兆も行かない予測だった。予測する企業とタイミングによって、その市場規模が変わるということだろう。たぶん、このときにはiPhoneが有機ELを採用するという噂は流れていたが、Samsungがラインを強化しているという情報はまだ出ていなかったことが影響しているのかもしれない。それでも、LCDと有機ELなどディスプレイ全般で6%の伸びない市場で、どのように他社と差別化を図るのかは、結構難しいところだ。まあ、JDIは他社の現在に対して、製造コストが半分以下になるという噂もあるが・・・。それで、勝てるとは言い難い。
http://www.fcr.co.jp/pr/15112.htm
<一度撤退、縮小した市場での量産はとても難しい>
日本企業の多くは、有機ELやFED/SEDを次世代の主力としたのが、2000年代半ばから後半である。その一つとして2005年~10年頃までは有機ELがこれから売れると豪語していた。しかし、リーマンショック後から、その流れは終わり・・・有機ELの開発スタンスは自社から、共同になり、最後には研究も縮小した企業もある。
一方で、韓国企業は2000年頃から日本のNECなどから、事業の一部を貰いずっとその研究をしてきたと言われる。日本が先行して投入したが、その後日本では今は厳しいと判断し規模を減らした中でも、ずっと多くの資金を入れて研究しつつ製品化を目指したとされる。そして、2010年代になり本格展開が始まった。ちょうどそれは、日本と入れ替わりになっていたのは、日本の先見性の無さであり、韓国の強かさかもしれない。
何故、日本企業が失敗したのかというと、一言で言えば日本企業は、4K、8Kテレビの理屈だったのだ。LCDのように黒浮きしない。消費電力が少ないといったマニアな売り方をしてしまったのだ。技術屋の拘りである。寿命は短いが世界最初だったりするからそれで良いと思ったのだろう。綺麗というのは確かに拘り屋さんには売れるが、一般の人はわざわざ高くて、寿命もないものは選ばない。それだけのことであるが、それがとても大きな問題だった。
それに対して、韓国企業が売ったのは、有機ELだからこそ出来る、超薄型と曲面ディスプレイの応用である。テレビを局面にする。その上綺麗でしょうと売る。または、Galaxy Edgeのように曲面のELを使い、変わった操作がエッジの部分で出来るという売り方が効果を出した。これによって量産と自社ブランドの成長に成功した訳だ。
今でも有機ELには欠点がある。トーンやガンマカーブは、使用時間が長いと崩れる傾向がある。これは、発光する有機素材の輝度寿命がRGBでばらけていることが原因である。要は、ディスプレイの色が、赤っぽくなる。青っぽくなるといった症状に悩まされるのだ。そしてそれ故に、同じ静止画像を常に表示していると、焼き付き(ゴースト)が発生するようにもある。
これは、例えば赤ばかりが表示されていると、赤の素材は徐々に暗くなり光らなくなる。これは、常に青を光らせる場合や緑を光らせる場合も同じだ。実際には、たいていの色は真っ赤や真っ青だけで再現されることはないため、3原色の光の明るさで調整しているのだが、別の映像などを表示すると、その劣化した部分が特定の色を再現したときに暗く沈んでしまう。
その暗くなる影が焼き付いているように見えるのだ。
それを、踏まえても補ってくれるだけの操作性などでの利点があれば、有機ELは売れるが・・・。
ただモジュールで売っても、売れるかどうかは分からない。もし、それでアドバンテージを取るなら、よほど安いか、よほど寿命が長いかといった利点がなければいけない。
ちなみに焼き付き問題は、SamsungやLGでは製品化を続けてきた結果、フィードバックが増え、徐々に発生までの時間が延びているという。今から参入するということは、JDIがその水準を超えるほど焼き付きに強いかどうかも、重要なのであり、ただ安価な量産計画を発表したから良いとは言えない訳だ。来春にそれが分かるが、それによってはJDIは価格を落とすだけの競争をして、自分で首を絞めることもあり得る。
<誰にどう売るのか?>
個人的な見解を言えば、LCDでも市場シェアを十分に開拓出来ていないJDIが、有機ELで伸びるには、相当優れた技術があり、尚且つ有機ELでしかできない新しさを提案するしかない。可能なら、自社でオリジナルの有機EL製品を作り、直接市場に売るぐらいのアイデアも持つ必要もあるのだ。ソニーや東芝の出資から脱却することも検討するほどに力を注げば、変化するかもしれない。
それが出来なければ、ずっと部品業者(サプライヤー)止まりで、他の部品業者と価格競争に晒されることになる。技術がいくらあっても、その技術を応用出来人々が凄いと思える商品に出来なければ、今の世の中では、良いことはなく買いたたかれるだけだ。
本当に、私個人の発想だが、JDIはスマートフォンなどに向けた中小型を売り文句にELを売るつもりのようだが・・・これも間違っている。この量産方式だと、LCDと同じ流れになり、いつか生産量と為替でリードしている国の工場が成長するだろう。
こういう汎用品は、競合相手が多い。その時点で私は発想に間違いがあると思っている。むしろ、有機ELが全く使われていない分野や、有機ELである必要が今のところないと思われる分野で、我が社の有機ELだとここが良いですから、置き換えませんかと言えなければ、先行企業を出し抜くこともできない。
<下積みから頑張る企業に、後発や再参入は難しい>
これは他のビジネスでも言えるが、問題があるとすれば、何かと後を追いかけているということだ。
例えばビジネスは、「膨らませて使うモジュール、ISSでの試験に成功 NASA」のように、これまで実用化を夢見て出来ていなかった技術が、そうであるように、明らかに目に見えてここなら、我が社は他と競合しないと言えるビジネスは魅力的になる。
じゃあ、既に存在する物の中でキラリと光るには、どう売るか・・・それは、下積みに相当する営業戦略を作ることだ。要は、職人工場で、誰かがこれからはロボットといったから、ロボットを売る会社に転換するのは、安易であるということだ。もしかすると、世界が全部ロボットになるなら、手作り職人芸の方が、広告になり、観光になるかもしれないと考えることだ。人は、安く量産されるものを求める一方で、新しいもの、特別なものも求める。そこに商機があるかもしれないと説いて、そういう市場を目指して下積み(営業やマーケティング)を行うのも手なのだ。
本当に有機ELの量産だけが投資の最善策なのか・・・現時点では、見えない。JDIは大きな企業なので、小さなことをこつこつやるのも難しいという側面もあるだろう。
しかし、現状を考えると、これは明らかにApple関連の需要が中心のように思える。結局他の対処方法が見つからず、LCDの将来が危ないから、有機ELに逃げ込もうとしているようにしか見えない訳だ。
<技術が低くても、売れる産業はある>
一般に技術が高く、長く使えるというのは、重要に見えるが場合によっては技術が低くても、売れる場合がある。例えば、同じ表示しかしないインフォメーションなら、少々焼き付いていても良い。その分安ければ売れるかもしれないし、場合によっては高くても売れるケースもある。暗い場所で使うなら、輝度を下げることで、寿命は長く持つだろう。
スマホなどでは傷や指紋が付かないことが求められるが、例えば誰も触らず、当たらず遠くから眺めるだけなら、極端な話傷に弱いパネルでも良い。それは、技術があるから売れるということではなく、自分の持っている技術を、適した所に売っていくという意味である。
即ち、どれだけ売るかではなく、誰に売るか?どの産業に対して売るかで、付加価値も変わってくる。
場合によっては、大量に作らなくても、少量が高く売れるかもしれない。人工程が多く製造ライン自体が特殊で、他社は参入できない可能性もあるのだから・・・。量産は最初の一号なら確かに長い成長性が期待出来る。しかし、二号三号になればなるほど、価格勝負に繋がる。
それを防ぐには、特色ある市場で、第一号を目指すこと、自分が持つ技術でどの市場なら最も利益が出るかを、模索することが重要である。それは「量」(コストパフォーマンス)ではなく、少し高くても、今までの品より、「良」と思わせることなのだ。
それが一番時間が掛かることであり、それこそ開拓であり下積みになる。ビッグデータや統計などで、戦略を考える企業は多いが、売れる所に投入するだけではなく、売れないまたは原価が割れる理由を追及し、そこで他の企業が思いもしないような売れる(利益が出る)物を、見つけ出すことこそ、今一番JDIに不足していることかもしれない。
まあ、もしそれを見つけられても、すぐに結果を出すのは難しいだろうが・・・。
そういう、世界の流れが、有機ELではなくJDIが自分で新しい分野や市場を見つけて、有機ELの新しい使い方などを売り込める状況がやってくることを祈っている。
LCD戦略が完全に、岐路に立たされており、しかも今それでもだぶついている中で、中国企業がLCD生産を倍規模に拡大するとも言われる。
その結果、SamsungなどはLCD事業を縮小しているが、液晶一本のJDIは焦っているのかもしれない。
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160530-OYT1T50010.html?from=ytop_top
尚、富士通キメラ総研の昨年末の予測では、有機ELは2020年に3兆も行かない予測だった。予測する企業とタイミングによって、その市場規模が変わるということだろう。たぶん、このときにはiPhoneが有機ELを採用するという噂は流れていたが、Samsungがラインを強化しているという情報はまだ出ていなかったことが影響しているのかもしれない。それでも、LCDと有機ELなどディスプレイ全般で6%の伸びない市場で、どのように他社と差別化を図るのかは、結構難しいところだ。まあ、JDIは他社の現在に対して、製造コストが半分以下になるという噂もあるが・・・。それで、勝てるとは言い難い。
http://www.fcr.co.jp/pr/15112.htm
<一度撤退、縮小した市場での量産はとても難しい>
日本企業の多くは、有機ELやFED/SEDを次世代の主力としたのが、2000年代半ばから後半である。その一つとして2005年~10年頃までは有機ELがこれから売れると豪語していた。しかし、リーマンショック後から、その流れは終わり・・・有機ELの開発スタンスは自社から、共同になり、最後には研究も縮小した企業もある。
一方で、韓国企業は2000年頃から日本のNECなどから、事業の一部を貰いずっとその研究をしてきたと言われる。日本が先行して投入したが、その後日本では今は厳しいと判断し規模を減らした中でも、ずっと多くの資金を入れて研究しつつ製品化を目指したとされる。そして、2010年代になり本格展開が始まった。ちょうどそれは、日本と入れ替わりになっていたのは、日本の先見性の無さであり、韓国の強かさかもしれない。
何故、日本企業が失敗したのかというと、一言で言えば日本企業は、4K、8Kテレビの理屈だったのだ。LCDのように黒浮きしない。消費電力が少ないといったマニアな売り方をしてしまったのだ。技術屋の拘りである。寿命は短いが世界最初だったりするからそれで良いと思ったのだろう。綺麗というのは確かに拘り屋さんには売れるが、一般の人はわざわざ高くて、寿命もないものは選ばない。それだけのことであるが、それがとても大きな問題だった。
それに対して、韓国企業が売ったのは、有機ELだからこそ出来る、超薄型と曲面ディスプレイの応用である。テレビを局面にする。その上綺麗でしょうと売る。または、Galaxy Edgeのように曲面のELを使い、変わった操作がエッジの部分で出来るという売り方が効果を出した。これによって量産と自社ブランドの成長に成功した訳だ。
今でも有機ELには欠点がある。トーンやガンマカーブは、使用時間が長いと崩れる傾向がある。これは、発光する有機素材の輝度寿命がRGBでばらけていることが原因である。要は、ディスプレイの色が、赤っぽくなる。青っぽくなるといった症状に悩まされるのだ。そしてそれ故に、同じ静止画像を常に表示していると、焼き付き(ゴースト)が発生するようにもある。
これは、例えば赤ばかりが表示されていると、赤の素材は徐々に暗くなり光らなくなる。これは、常に青を光らせる場合や緑を光らせる場合も同じだ。実際には、たいていの色は真っ赤や真っ青だけで再現されることはないため、3原色の光の明るさで調整しているのだが、別の映像などを表示すると、その劣化した部分が特定の色を再現したときに暗く沈んでしまう。
その暗くなる影が焼き付いているように見えるのだ。
それを、踏まえても補ってくれるだけの操作性などでの利点があれば、有機ELは売れるが・・・。
ただモジュールで売っても、売れるかどうかは分からない。もし、それでアドバンテージを取るなら、よほど安いか、よほど寿命が長いかといった利点がなければいけない。
ちなみに焼き付き問題は、SamsungやLGでは製品化を続けてきた結果、フィードバックが増え、徐々に発生までの時間が延びているという。今から参入するということは、JDIがその水準を超えるほど焼き付きに強いかどうかも、重要なのであり、ただ安価な量産計画を発表したから良いとは言えない訳だ。来春にそれが分かるが、それによってはJDIは価格を落とすだけの競争をして、自分で首を絞めることもあり得る。
<誰にどう売るのか?>
個人的な見解を言えば、LCDでも市場シェアを十分に開拓出来ていないJDIが、有機ELで伸びるには、相当優れた技術があり、尚且つ有機ELでしかできない新しさを提案するしかない。可能なら、自社でオリジナルの有機EL製品を作り、直接市場に売るぐらいのアイデアも持つ必要もあるのだ。ソニーや東芝の出資から脱却することも検討するほどに力を注げば、変化するかもしれない。
それが出来なければ、ずっと部品業者(サプライヤー)止まりで、他の部品業者と価格競争に晒されることになる。技術がいくらあっても、その技術を応用出来人々が凄いと思える商品に出来なければ、今の世の中では、良いことはなく買いたたかれるだけだ。
本当に、私個人の発想だが、JDIはスマートフォンなどに向けた中小型を売り文句にELを売るつもりのようだが・・・これも間違っている。この量産方式だと、LCDと同じ流れになり、いつか生産量と為替でリードしている国の工場が成長するだろう。
こういう汎用品は、競合相手が多い。その時点で私は発想に間違いがあると思っている。むしろ、有機ELが全く使われていない分野や、有機ELである必要が今のところないと思われる分野で、我が社の有機ELだとここが良いですから、置き換えませんかと言えなければ、先行企業を出し抜くこともできない。
<下積みから頑張る企業に、後発や再参入は難しい>
これは他のビジネスでも言えるが、問題があるとすれば、何かと後を追いかけているということだ。
例えばビジネスは、「膨らませて使うモジュール、ISSでの試験に成功 NASA」のように、これまで実用化を夢見て出来ていなかった技術が、そうであるように、明らかに目に見えてここなら、我が社は他と競合しないと言えるビジネスは魅力的になる。
じゃあ、既に存在する物の中でキラリと光るには、どう売るか・・・それは、下積みに相当する営業戦略を作ることだ。要は、職人工場で、誰かがこれからはロボットといったから、ロボットを売る会社に転換するのは、安易であるということだ。もしかすると、世界が全部ロボットになるなら、手作り職人芸の方が、広告になり、観光になるかもしれないと考えることだ。人は、安く量産されるものを求める一方で、新しいもの、特別なものも求める。そこに商機があるかもしれないと説いて、そういう市場を目指して下積み(営業やマーケティング)を行うのも手なのだ。
本当に有機ELの量産だけが投資の最善策なのか・・・現時点では、見えない。JDIは大きな企業なので、小さなことをこつこつやるのも難しいという側面もあるだろう。
しかし、現状を考えると、これは明らかにApple関連の需要が中心のように思える。結局他の対処方法が見つからず、LCDの将来が危ないから、有機ELに逃げ込もうとしているようにしか見えない訳だ。
<技術が低くても、売れる産業はある>
一般に技術が高く、長く使えるというのは、重要に見えるが場合によっては技術が低くても、売れる場合がある。例えば、同じ表示しかしないインフォメーションなら、少々焼き付いていても良い。その分安ければ売れるかもしれないし、場合によっては高くても売れるケースもある。暗い場所で使うなら、輝度を下げることで、寿命は長く持つだろう。
スマホなどでは傷や指紋が付かないことが求められるが、例えば誰も触らず、当たらず遠くから眺めるだけなら、極端な話傷に弱いパネルでも良い。それは、技術があるから売れるということではなく、自分の持っている技術を、適した所に売っていくという意味である。
即ち、どれだけ売るかではなく、誰に売るか?どの産業に対して売るかで、付加価値も変わってくる。
場合によっては、大量に作らなくても、少量が高く売れるかもしれない。人工程が多く製造ライン自体が特殊で、他社は参入できない可能性もあるのだから・・・。量産は最初の一号なら確かに長い成長性が期待出来る。しかし、二号三号になればなるほど、価格勝負に繋がる。
それを防ぐには、特色ある市場で、第一号を目指すこと、自分が持つ技術でどの市場なら最も利益が出るかを、模索することが重要である。それは「量」(コストパフォーマンス)ではなく、少し高くても、今までの品より、「良」と思わせることなのだ。
それが一番時間が掛かることであり、それこそ開拓であり下積みになる。ビッグデータや統計などで、戦略を考える企業は多いが、売れる所に投入するだけではなく、売れないまたは原価が割れる理由を追及し、そこで他の企業が思いもしないような売れる(利益が出る)物を、見つけ出すことこそ、今一番JDIに不足していることかもしれない。
まあ、もしそれを見つけられても、すぐに結果を出すのは難しいだろうが・・・。
そういう、世界の流れが、有機ELではなくJDIが自分で新しい分野や市場を見つけて、有機ELの新しい使い方などを売り込める状況がやってくることを祈っている。
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